書く上で頭にあったこと(怪談話風なきっかけ)

29
9月
2015
Posted by: mscrew   /   0 Comment

かつて、というか今でも同じかもしれないけれど、夏の合宿などでは、必ず怪談話をした。
聞いた話でも良いが、やはり実体験の方が盛り上がる。
これは海辺の民宿で、後輩から聞いた話。
前期の試験も終わって、下宿のみんなが国に帰る前に飲もうということになった。夕方、約束の時間になったがKの姿が見えない。玄関に靴はある。みなで下宿中をしばらく探してみたが、やはりいない。仕方なく欠席にして飲みに行った。
下宿に戻ると、Kが「なぜ自分を置いていったのか」と怒っている。説明しても、皆でからかうのか、俺はずっと下宿にいたと言い張る。あまりに真剣に怒るので、全員が一部屋に集まった。
大きな紙を畳に置いて、誰がどの時間どの辺りを探したか、時間と場所を縦軸横軸にした表を作り、それを塗りつぶしながら可能性を検討した。
その結果、Kが「壁抜け」で部屋を移動しない限り、下宿から消えていた時間が最低10分はあるという結論になった。
Kは次第に怒りも失せて恐ろしくなり、深夜というのに神社にお参りにいったという。

もうひとつ。これは自分自身の話。
夜、居間で本を読んでいると、妻が本を取り上げた。どうしたと聞くと、子供部屋で何をしていたのかと逆に問い返された。ずっとここで本を読んでいた、と言っても信じない。
「だって今、あなた子供部屋から出てきて、階段であたしとすれ違ったじゃない」妻が、子供部屋で何してたのと聞いても、黙ったまま降りて行ってしまったという。
つまり妻は、私のドッペルゲンガーを見たらしい。
現実に起こったことは以上で、ここから先は仮の話になるのだけれど、そのとき妻が、階段を下りるドッペル君の腕をつかんでいたら、さてどうなっていたのだろう。
その瞬間、妻はドッペル君と以後の人生を共にするよう決定付けられたのではないか。そうとしか思えない。すると、妻はドッペル君と異次元に消え去ってしまうのか。いやむしろ、私が居間から煙のように消えるのか。それとも、子供部屋から、妻の顔をしたやさしげなドッペルさんが、階段を下りてくるのか。

日常にはこのような穴が何気なく口を開いているのです。そんな「世にも奇妙な」ことを口ばしるのは無責任な話で、他人のことはともかく、自分の日常の穴など、「絶対認めたくない」というのが本音です。
 

阪後 昇

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